悲しみのイレーヌ

ピエール・ルメートルの長編ミステリ。
いろいろとミステリを読んでいて、作者がもっとも心を砕くものの一つに殺人のトリックがあるが、これは私にとってはどうでも良い。その点で正しいミステリファンではないという自覚はある。読んでいるうちに推測される着地点をどう裏切ってもらえるかが、私にとっては最も大事である。
この本はそういう意味でまさしく裏をかいてくれたので、良かった。特別にグロテスクな描写にも意味があったのも良い。惜しむらくはこの小説は「その女、アレックス」の前の話にあたるので、「その女〜」の読者にはある程度結末がわかってしまう点。もっともそれは二作目から読む私が悪いので仕方がないところでもある。オススメ。

悲しみのイレーヌ (文春文庫 ル 6-3)

悲しみのイレーヌ (文春文庫 ル 6-3)