1984年

ジョージ・オーウェルの長編SF。いわゆるディストピア小説。ソ連を連想させる全体主義国家によって分割統治され、毎日全ての行動を監視される近未来世界を描いている。主人公は体制に抗って更正施設で洗脳を受ける。「2+2=5」とか出てくるのもここ。
同じオーウェルなら「動物農場」の方がカリカチュアライズされてるだけわかりやすいのだけども、「1984年」はそうでないだけ身近な部分も省かず細かく描かれており、恐ろしさが迫ってくる。ただその恐ろしさや不安が大きいだけに対比して描かれる自由の素晴らしさもまた大きい。ちなみに世界を3分割した勢力圏とか「二重思考」とか新しい言語「ニュースピーク」とか、あんまり細かいので逆にこの全体主義国家は全部嘘でした、もしくは脳内で作り上げた幻でした、というマトリックスばりの結末まで考えながら読んでいたが、そんなことは全く無かった。
この作品が1948年に書かれた(タイトルの「1984年」は4と8を入れ替えたアナグラムといわれている)ものだというのは驚きである。1948年というのは出口王仁三郎ベーブ・ルースD・W・グリフィスなんかが亡くなってる年である。おぼんこぼんのこぼんや、中田カウス・ボタンのボタンが生まれた年でもある。歴史と現代のちょうど真ん中あたり。ちなみにwikiで調べました。wikiでついでに見たところ、1948年というのは第二次大戦直後。ソ連とその仲間たちはうまいことやって力を伸ばし、大英帝国は疲弊して崩壊が始まった頃である。その英国人であるオーウェルが、その不安と少しばかりの希望をないまぜにしたのがこの作品なのではなかろうか。おすすめ。

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)