猫の似づら絵師

出久根達郎の長編?時代小説。貸し本屋に勤めていた二人がクビになり、貧乏長屋に移り住み、それぞれ貧乏神売り、猫の似づら絵師という商売を始めて巻き込まれる珍騒動の数々。
タイトルの「似づら絵師」をはじめとして、この本には実に珍妙な商売が多く登場する。猫寺、猫屋、等等、著者の趣味からいって、おそらくこれらは全て実在した商売なのだろうと思う。なぜこれらが珍妙かと言えば、こんな商売が成り立つのかという疑問を抱かずにいられないほどニッチだからだが、正に江戸時代という時代は現代から見て異常なほどに商売が細分化されており、それでも商売が成り立つ場所と時代だったのである。物語の話自体はわりとどうでもいいが、そういう意味ではこの本は江戸時代の実際がよく描かれているのではなかろうか。
「御書物同心」がちらっと出てくるのも良かった。

猫の似づら絵師

猫の似づら絵師