逝きし世の面影

江戸時代は武士がのさばり農民や町民はひれ伏していた時代だったのだろうか?そのような重苦しい時代がなぜ260年も続いたのだろうか?幕末に日本を訪れた異邦人たちはその答えを残していてくれたのである。今は滅んでしまったが、人々が明るく暮らし、全く異なる価値観を持つ異邦人からみても美しくゆたかな文明が、当時は確かに日本列島に存在したのである。
この本を読んでいると、いかに自分が西欧文明に毒されているか、いかに明治政府(と戦後政府)による教育の影響が大きかったかを感じる。この本の中では古き日本の美点だけでなく欠点(と西欧人にとって思われたもの)についても広く証言を取り上げている。本文中で明治の教育を受けた日本人が指摘した「虚偽と好色」こそがそれにあたるのであるが、それこそ西欧的な見方であることはいうまでもない。
とかく利己的な部分が露わになり慎みに欠ける人が多くなったと言われる最近の世の中でこそ、全ての日本人は姿勢を正してこの本を読み、今は滅んでしまった、しかし自分たちの中に脈々と受け継がれているはずの江戸の文明を蘇らせるべきである。必読。

逝きし世の面影 (平凡社ライブラリー)

逝きし世の面影 (平凡社ライブラリー)