日本社会の歴史 上・中・下

網野義彦の新書。
いわゆる「日本の歴史」と異なるのは、国単位でなく日本列島とその周辺における人の営みの歴史をまとめている点と、従来見落とされがちだった、農業以外に従事していた海民や職能民などにも注目し、時の中央政権から被差別民まで、できるだけ列島全体に言及している点。特に東日本については、中央に対する別の政権の可能性を秘めた場所として説明している。学校で習うような日本史が日本の政権を追うあまり情報が近畿地方寄りになるのと対照的だった。ついでに言えば東と西の差異は文化の趣や成熟度の差異であるが、これが被差別民の発生にも関わってくるという説明に納得。関東ではあまり話題に上がらないので常常不思議に思っていたのでした。
他にすっきりした点は平安時代から多く見られる上皇天皇の共存について、氏の長者のような「治天の君」という言葉があったのが驚きというか、初めて聞く言葉だったがその辺の話をすんなりと理解できた。学校の歴史では教わらない言葉のようだけども、今の学校では教えてるのだろうか。そうだといいな。オススメ。

日本社会の歴史〈上〉 (岩波新書)

日本社会の歴史〈上〉 (岩波新書)

日本社会の歴史〈中〉 (岩波新書)

日本社会の歴史〈中〉 (岩波新書)

日本社会の歴史〈下〉 (岩波新書)

日本社会の歴史〈下〉 (岩波新書)