怨霊になった天皇

基本的に崇徳天皇の話。百人一首の「むすめふさほせ」の「せ」を読んだ「崇徳上皇」と言った方がわかる人も多いかもしれない。
日本人は忘れがちなことだが、思えば天皇家というのは全くおかしな家で、少なくとも戦前までの1300年間(!)はある種の日本の頂点にあったにもかかわらず、誰もこれを倒して取って代わろうという者がいなかった家である(画策していた人は3人ぐらいいたようだけども)。世界の歴史を見ても例を見ない。なんでそんなことになったのか、というのは日本という国の歴史そのものであり簡単には説明できないが、そこがまた面白い。
また歴代の天皇にどういう人たちがいたのか、というところに目を向けてみると、ちゃんと埋葬されていない天皇がいたり、親兄弟で争っていたり、天皇同士で争ったり、なんだかいろいろあって面白い。「徳」の字がつく天皇はあまり良い死に方をしていない、という話も「逆転の日本史」かなにかで取り上げられていたが、言われてみてなるほど、という面白い話である。
そういう中でも崇徳天皇はエキセントリックNo.1で、なにしろ天皇家を滅ぼそうと呪ったというのだからすごい。こういったあたりが本書の主題で、まあいろいろ紹介してはいるけども要はこれを書きたかったんですね、という。
ちなみに著者は「怨霊は生者が作る」というもっともな主張を述べる一方で、怨霊の存在そのものを信じて疑っていないようらしく、その姿勢は疑問。どっちだよ、という。まあ旧・皇族といってもいろんな人がいるんだなと変に感心した。

怨霊になった天皇

怨霊になった天皇