たたり

シャーリー・ジャクソンの長編小説。ある博士が過去に心霊体験のある人たちを「丘の屋敷」と呼ばれる幽霊屋敷に呼び、心霊体験を記録しようとする話。主人公は心霊体験のある女性。不遇といえる生活を送る彼女は「丘の屋敷」にやってきたことで新しい生活を夢見るが、受け入れてくれたのは心霊現象の起こる屋敷だけだったという、なんともやりきれない話。
この人の本は短編集『くじ』を読んだことがあるのだけども、そこでは誰もが他人に見せないように内側に抱える感情を暴いたりつついたり、とさまざまな形で登場人物をいじめていたが、『たたり』ではそれらがすべて主人公に集中した感じ。だから「たたり」と題しながらも幽霊が出てくるわけではなく、専ら主人公の心理描写に終始しており、つまるところ怖いのは人間、というオチになるのだろう。
正直なところ、怖く感じた場面は一箇所しかなかったし、主人公はひたすら暗くて魅力的でない(魅力があればそもそもこういう話にはならないが)ので退屈だった。怖い怖いと聞いて想像していたものと異なったので、拍子抜けしたのがまずかったかもしれない。読み終ったときは後味の悪さだけが残った。

たたり (創元推理文庫)

たたり (創元推理文庫)