闇に踊れ!

スタンリイ・エリンの長編小説。引退した教授がテープレコーダーに語りかけている。

わたしの名はカーワン。白人、男性、引退した歴史学準教授。今はテープレコーダーに向かって語りかけている。わたしは末期的な肺癌患者である。余命は数ヶ月。だが、その数ヶ月を約三週間に縮めようとしている。少なくとも六十人の命を道連れに。以下述べるのは、その所以である……。

このあとに続く、カーワンの計画とその理由の供述が偏執的で狂っていて良い。執筆当初に出版を拒否されたというのもうなずける。計画の理由は平たく言えば人種差別になるんだろうけども、ひとくちにそう言い切れないところがある。もう一つの交差する物語においても黒人への差別意識を剥き出しにする登場人物たちが出てくる。当然のことながら作中では差別に対して肯定も必要以上の否定もされておらず、ただそこにあるもの、として描かれていたように思えた。その辺がむしろまずかったのかもしれない。
物語の結末はわりと平凡だったが、そこに至るまでの過程は人種差別の問題も含めて何が悪いと明確に言い切れない話で面白かった。突き詰めれば一線を越えたら負けではあるんだけども。
映画化したら面白くなりそうだが、人種差別云々で難しいんだろうなあ。

闇に踊れ! (創元推理文庫 (281-01))

闇に踊れ! (創元推理文庫 (281-01))