歴史を考えるヒント

網野善彦の講演を文章化した連載をまとめた本。さまざまな言葉の成り立ちをきっかけにして歴史を考える。「『日本』という国名」から始まり「列島の多様な地域性」「地域名の誕生」など興味深い話が目白押し。被差別民・無縁等の著者のテーマもわかりやすく説明されている。
日本語が日本人の歴史と共にある、というのは考えてみれば当たり前のことだが、地元の旧跡に愛着を持ちながらも軽んじるような気持ちと同じでなかなか気がつかないものである。言われてみればなるほど、という。
私のようなただの歴史好きはその事実に驚くだけという楽しみ方をしがちだが、さらに「では当時から現代に至る変化の背景には何があったのか」と考えるのが網野善彦はじめ歴史研究家の考え方らしい。前者を点とすれば後者は歴史を線で見ているといえるかもしれない。このような考察が複雑に絡み合うことで奥深い洞察というものができるのだなあ、ということを感じた。うまくいえないけれども歴史が好きな向きはとにかく読んでほしい一冊。おすすめ。

歴史を考えるヒント (新潮選書)

歴史を考えるヒント (新潮選書)