姑獲鳥の夏

京極夏彦のデビュー作。
20箇月も妊娠している女という話を皮切りに、次次と発覚する医師失踪事件、産婦人科での新生児失踪事件等等がラストへ向けて渦巻くように一つにまとまっていく。そのまとめ方が上手というかきれいにまとまっていると思う。推理小説は突き詰めればどうやって伏線をバラまくかにあるので結末に向けて収斂していくのは当たり前といえば当たり前だが、上手に回収されれば気持ちがよいのもまた本当である。
また途中何度か挟まれる京極堂の関口への解説は、前回は著者の持論であると思って読んでいたが、もちろんそういう面もあるのだろうけどもむしろ読者への解説で、これを踏まえての結末と考えると読む気がしなくなったので半分だけにした。
今回のテーマというかお題は「憑き物筋」で、一般には狐憑きなどが有名だが、話にも出てくる四国辺りでは犬神憑きなどが盛んというか、あったらしい。以前どこかで読んだ怖い話で、犬系と猿(猫?)系の家は今でも仲が悪いとかそのような話もあった。もちろん真偽の程は定かではないのだけれども、シロ/クロとか、出てくる言葉に共通項を見出せるのでまったくの嘘ではないんだろうな、というところもいい。

文庫版 姑獲鳥の夏 (講談社文庫)

文庫版 姑獲鳥の夏 (講談社文庫)