司馬遼太郎の戦国シリーズ第一弾。ちなみに第二弾が「新・太閤記」でそのあとに「覇王の家」「関が原」等等が続くので今回の私は逆に読んでいることになるがまあそれはそれとして。主人公は前半が斉藤道三、後半がその二人の弟子という位置付けの織田信長と明智光秀。道三の美濃国を盗るまでの動きの軽やかさは何度読んでも楽しい。また信長というと中世価値観の破壊者という位置付けがあるがその祖を斉藤道三に求めて一連の流れと考えた点と、破壊と想像の道を邁進する信長と中世価値観の集大成(もしくは限界)ともいえる光秀が徐徐に齟齬をきたしていく、光秀側から言うと悲愴感漂う描写のあたりやはり司馬遼太郎はエラい。
ところで信長が中世的価値観を破壊した理由というのは平たく言えば彼の合理的な考え方に合わなかったからで、それ以上でもそれ以下でもないのだが、その信長を野望ごと破壊したのが中世的な明智光秀であるというのは急展開についていけなかった歴史のしわ寄せであるかのような印象を与え、それゆえに強烈な皮肉でもあり歴史の持つ最も面白い部分の一つだと思う。
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