新史太閤記

司馬遼太郎の作品は外国人が読んでもわかるように書いていると本人が言う通り、経済や文化、宗教等様様な視点からその時代の価値観を浮き彫りにしていくのでそこに描かれる人人の行動がわかりやすい。そのわかりやすさに因れば、日本史上最も出世した男である豊臣秀吉の一代記の原動力を、階層的にゼロから出発したことと尾張という早くから商業が活発であった土地に求めたことがこの作品に「新」が冠せられた理由かと思う。
歴史にifは禁物だが、秀吉亡き後に徳川家康によって塗り替えられてしまったことを考えると安土・桃山時代の系譜が続いていたらその後の日本はどうなっていたかを考えると面白そうである。多くのことは言えないが少なくとも首都は東日本には来ていないだろう。全ての歴史はそれなりに必然であるからこういう夢想に意味はないのだが、そういうことを考えさせてしまうのは信長・秀吉の時代にはそれだけ魅力があるということなのかもしれない。

新史太閤記 (上巻) (新潮文庫)

新史太閤記 (上巻) (新潮文庫)

新史太閤記 (下巻) (新潮文庫)

新史太閤記 (下巻) (新潮文庫)