箱根の坂

久しぶりに再見。室町末期、駿河国の動乱のどさくさにまぎれて城持ちの身分となり、北条五代の礎を築いた伊勢新九郎の一代記。一般には身元不明の身でありながら相模を乗っ取るまでに至ったことを指して斉藤道三と並ぶ戦国初期を代表する人とされるが、司馬遼太郎はそこに信念を加えることで読後感を爽やかにした。
しかしよくよく考えてみれば当たり前の話かもしれないが、実際に守護の抑えが利かなくなっていたとしても天下の将軍様によって決められた守護支配を、つまりは200年以上続いた体制を史上初めて覆そう(作中でもさすがに悩んでました)てんだから偉人には違いない。まさに時代を終わらせた男。
ところで司馬遼太郎の作品が他と大きく異なるのはその時代の宗教というか価値観をはっきり描いている点で、それと同時に他のいろいろなこともはっきりと書いている。はっきりさせることで逆に「フィクションだし。」と割り切ってしまっているような気がする。そこが司馬遼太郎のすごいところ。司馬フォーエバー。亡くなってるけどフォーエバー

箱根の坂〈上〉 (講談社文庫)

箱根の坂〈上〉 (講談社文庫)