吉原御免状

隆慶一郎の作家デビュー作。謎を秘めた吉原遊郭を舞台に天皇のご落胤(しかも宮本武蔵の弟子)と裏柳生一族が「神君御免状」争奪戦を繰り広げる、と抜き出すとかなり奇抜な話だが、あまり語られることのない士農工商の枠外の歴史を交えており、丁度カムイ伝を読み始めたところだったりサンカが気になるお年頃だったりするので面白かった。隆慶一郎といえば『花の慶次』『影武者徳川家康』の原作者として有名だが、そういえばこれらの作品にも少しだけではあるものの士農工商の外の人人が出ていたりしたことを思い出して妙に納得した。
ところでこの作品で描かれた「道々の輩」についての話を鵜呑み呑みにするつもりはないが、考えてみれば徳川幕府の作った士農工商という分類に外があったというのは当たり前の話で、世の中には侍でも農民でも工人でも商人でもない職業なんてたくさんあるわけである。その一部が穢多・非人等の被差別民であったにしても、もっと研究されるべきであり教科書に載るぐらい当たり前のこととされるべきかと思う。

吉原御免状 (新潮文庫)

吉原御免状 (新潮文庫)