海辺のカフカ

15歳の少年の少し不思議な成長譚。丹波哲郎の『大霊界』ばりにこの作品を省略するとそうなるのではないかと思う(『大霊界』の場合は「死んだら驚いた」。心に残るキャッチコピーである)。さて大霊界はともかくこの物語は前半で伏線を張り巡らして話を膨らませ、後半で収斂していくような進み方をする。ただ最終的に収斂しきっていないというか私にとってはすっきりしなかった部分があって残念。不思議な話は好きだが、不思議を不思議として扱うなら説明のなされない伏線を張られるとすっきりしないという話。
さて本筋はいいとして、私は村上春樹の本は初めてだが、物事を逐一正確に描くのはこの作品だけなのか癖なのか、またそれだけリアリティを生み出そうとしているのかそうでもないのか。どちらであってもふうんと納得するだけなのだが後者であればこれも少し鬱陶しい。とにかく全体に好きではないけれども、面白かった。

海辺のカフカ (上) (新潮文庫)

海辺のカフカ (上) (新潮文庫)

海辺のカフカ (下) (新潮文庫)

海辺のカフカ (下) (新潮文庫)