ハリーの災難

監督:アルフレッド・ヒッチコック(1955 米)
出演:ジャック・レモンシャーリー・マクレーン
内容:静かな村で死体が発見された。
たぶん2回目の鑑賞。ヒッチコックには珍しいコメディ。シャーリー・マクレーンのデビュー作でもある。
冒頭から映されるのどかな田園風景に一つの死体というアンバランスは、死体を小道具に繰返されるシニカルなコメディの象徴ともいえる。ただこれだけではブラックユーモアというには足りない。銃声と共に聞こえる意味ありげなセリフ、あやしい扉の動き、そしてハリーの死因の謎。これらはいずれも普通のサスペンス映画であれば謎を解く鍵となりうるものであるが、映画の結末をもってその全てを笑い飛ばすことで既に確立していた「サスペンス・ミステリー映画の巨匠」という己の名声までもを利用したブラックユーモアを完結させている。そういう意味では一生に一度しか作れない作品であるし、ヒッチコックの名声にまで気を配らなければ評価が分かれてしまう作品。