ぼくの伯父さんの休暇

監督/脚本/出演:ジャック・タチ (1952 フランス)
内容:バカンスに沸くリゾート地にユロ氏が降り立った


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 ジャック・タチの演じる主人公ユロ氏がスパンスパンと音を立てるボロ車で優雅なリゾート地に入り込んでいく様は、澄ました顔で右へならえとばかりにバカンスへと出かける人々を笑い、お互いに距離をとりながら過ごす大人世界をぶち壊しに来ましたよ、とジャック・タチが宣言しているようだ。そしてユロ氏はおっちょこちょいではすまされない程の間抜けっぷりで周囲を騒動に巻き込んでいく。
 実際ユロ氏の間抜けぶりはすさまじく、徐々に周りの人にも伝染していったようだが、当然ながらラストに象徴される大人同士のおつきあいには入れてもらえない哀しさが全体にある。つまりはユロ氏が大人の姿をしていても大人の世界では異物である子供だからだが、相手をしてくれたのが子供のほかにはアメリカ人の老婦人(アメリカ人らしくヒュロ氏と呼んでいた)と、妻にも相手をされないような完全にリタイヤした老人という、やはり大人世界から見た異物的な存在だけだったのもうなずけるように思う。
 また登場人物の動きといい音の使われ方といい全体に計算し尽くされた感があって、そういう笑わせ方も好き。