グッバイ・レーニン

監督:ヴォルフガング・ベッカー(2003年 ドイツ)
出演:ダニエル・ブリュース、カトリーン・ザースチュルパン・ハマートヴァ
内容:母が昏睡中にベルリンの壁が崩壊。息子は母の命のため懸命に嘘をつく。
社会主義が崩壊したことは知っていてもそこに暮らしている人がどう影響を受けたかについてはモンスターで読んだ知識ぐらいしかなかったので新鮮だった。またその辺のくだりを知らない人に対しても、分かりやすく、かつテンポ良く崩壊→西側からの様々なものの流入が起こっていた。同時に主人公一家にも様々な事件が起こり、この一つ一つは東ドイツ国民に起こった出来事なんだと思うと笑えないが、そんな状況を引き起こした東ドイツに生きる人々は割とたくましく哀しい。
壁の崩壊を望んだ息子は母の病室と西側文化の流入する外界を途絶し、母の部屋の中に東ドイツを生き延びさせる。奇しくもこれは当の東ドイツが今までしてきたことで、母のために始めたはずの作業だったが息子は徐々にのめりこみ、誰のためにやっているのかわからなくなってしまう。これは誰のためのものかわからないという点で社会主義と通ずるところがあり、また外の世界の情報を止めることができずに崩壊に至るのも現実と同じ。ネタバレするとつまるところ騙し騙されな話だったわけだが、どちらの嘘も親子の愛情ゆえのものという点非常に上手くできている。
この映画でもっとも笑えるのは映像に生きようとするロバート・カーライル似の息子の友人。彼は社会主義下のニュース番組を真似て作るが、それは北朝鮮の報道番組に似ており、身近に社会主義国のある日本人としてはあまり笑えない。でも面白かった。