浮き雲

監督:アキ・カウリスマキ (1996 フィンランド)
出演:カティ・オウティネン
内容:冴えない貧乏夫婦の幸不幸
 貧しいながらも幸せに暮らすイロタとラウリ。しかし妻イロタは勤め先のレストランが潰れ、再就職先に希望を見出すも店のオヤジはかなり怪しい。夫ラウリは会社をリストラされ、再就職にも失敗、家財道具まで持っていかれる始末。目も当てられないほどの地味な不幸の連続で、「マッチ工場の少女」を彷彿とさせるが、カードを引かせて適当にリストラする会社、画面から外された暴力シーン、控えめな飼い犬など、それぞれ「微妙な」としか言い様のない笑いが絶妙に配置されており、淡々と笑いを誘う。
 笑いもせず挨拶もしない無口な登場人物たちの人生は、傍から見ると残酷な起伏に富んでいるが、イロタとラウリ夫婦の愛情にはさほど影響がない。酒に溺れて夫の帰りが遅くなっても、夫が全財産を賭けた賭けに負けても、妻の愛情は盤石で、直向に前に進んでいく。その妻の行動あってのハッピーエンディングは、前半の不幸の連続からすると少し以外だったが、心温まる終り方だった。
 しかしマッティ・ペロンパーが生きて出演していれば、ラウリはもっとダメダメな感じになったように思うので、それが唯一残念なところ。