はじめての民俗学

民俗学とはどういうものか。ハレとケとはどういうものか、柳田国男折口信夫の考え方はどう異なるのか、基本的なことを教えてくれる。民俗学は古いもの、田舎に遺るものから掘り起こすもの、というイメージがあったが、もちろんそれも大事だが、都市に人が集まる現代には、現代の民俗学としてのフォークロアの研究がある、というのも言われてみれば納得である。
流行神と祀り棄て、というくだりでは日本人の原型を見たような気がする。
しかし1000年以上も昔の歌やものが残っていてこそ古い時代の研究もできるわけで、そういうものが残っている日本は素晴らしいなあ。

一瞬の光の中で

ロバート・ゴダードのミステリ。6月に読んだ本。
ウィーンで出会った女性が忘れられない主人公は、再会を約束して別れるが、彼女はメッセージを残して消えてしまった。撮影したはずの写真もない。果たして彼女は何者なのか?カメラ草創期の秘話を絡めて物語は劇的に展開する。
知的だが危なっかしい主人公、悲劇的な運命の(昔の)女、犯人に操られる主人公。ゴダードの好きな、もしくは得意なピースがちりばめられていて、安定の面白さではある。ここからネタバレになるのでこれから読むつもりの向きは注意してほしいが、娘が死んでしまったのが異様に悲しい。内容にケチをつけたくなることはあまりないのだが、これはちょっといただけない。死なせる必要がない。そこまでするかなあ犯人。なのでおすすめはしない。

一瞬の光のなかで〈上〉 (扶桑社ミステリー)

一瞬の光のなかで〈上〉 (扶桑社ミステリー)

一瞬の光のなかで〈下〉 (扶桑社ミステリー)

一瞬の光のなかで〈下〉 (扶桑社ミステリー)

古代は輝いていた〈1〉『風土記』にいた卑弥呼

以前読んだ本のシリーズ。内容は、出雲の国譲りは旧政権から新政権への政権移動、もっといえばアマテラスたちは出雲政権に属す、対馬あたりの人たちであり、その後アマテラス勢力は筑紫を中心に台頭し、邪馬台国を形成していったのではないか、という話。ちなみに卑弥呼筑紫国風土記に記された「甕依姫」がそれにあたるんではないか、という主張。こういう本にありがちだが、全体によく考えてあるのだが資料の取捨選択が都合の良いように思えてならない。できれば「これに対応する説ではこう言ってるけど」というのも書いてあるとわかりやすい。自分で読めという話ですが。
あと面白かったのは「二倍年暦」の話。昔の人は今の一年を二年として数える習慣があったという話で、これがあると確かに初期の天皇の寿命は矛盾なく解決できる。ちなみに継体天皇のあたりから普通の数え方になるのもなんとなく納得である。

悲しみのイレーヌ

ピエール・ルメートルの長編ミステリ。
いろいろとミステリを読んでいて、作者がもっとも心を砕くものの一つに殺人のトリックがあるが、これは私にとってはどうでも良い。その点で正しいミステリファンではないという自覚はある。読んでいるうちに推測される着地点をどう裏切ってもらえるかが、私にとっては最も大事である。
この本はそういう意味でまさしく裏をかいてくれたので、良かった。特別にグロテスクな描写にも意味があったのも良い。惜しむらくはこの小説は「その女、アレックス」の前の話にあたるので、「その女〜」の読者にはある程度結末がわかってしまう点。もっともそれは二作目から読む私が悪いので仕方がないところでもある。オススメ。

悲しみのイレーヌ (文春文庫 ル 6-3)

悲しみのイレーヌ (文春文庫 ル 6-3)