星新一1001話を作った男

星新一についてのノンフィクション。 星新一と言えばショートショートの名手として知られているが、星製薬の御曹司であったことでも有名である。星製薬関連の話は星新一のエッセイを読んでいてもあまり出てこない。かわりに父・星一についてはよく出てくる。…

イギリス近代史講義

イギリスにおいて、どのようにして都市が形成され、どのように世界の需要に対応し、どのように工業化してきたか、という本。おおむねわかりやすい。本書で「成長パラノイア」という言葉が出てくる。未来は過去より便利で豊かで成長していなければならない、…

驚きの英国史

ノルマン・コンクエスト、マグナ・カルタ、アーサー王、アイルランド問題、フォークランド紛争といった英国史の出来事がイギリス(主にイングランド)人にとって、どういう意味を持つかということをまとめた本。どのエピソードも読みやすく面白くまとまって…

天下分け目の関ケ原の合戦はなかった

歴史の本には衝撃的なタイトルをつければ良い、と思っている人がいるのかいないのか、そういったタイトルは多い。この本がどちらに入るかはわからないが、本の主旨としては、従来言われていたような東西両軍の激突は無かったという意味で「関ケ原の合戦はな…

アングロサクソンと日本人

英国史をなぞってそれぞれの時代のエピソードを紹介しつつ、イギリスと日本を比べた文化論。出してくるエピソードが面白いので飽きない。 中でも面白かったのが第二章「国語が消えた」。これはかいつまんで言うと以下のようになる。 それまで古英語を話して…

フランクリン自伝

フランクリンと聞くと、どうしてもアレサ・フランクリンが思い浮かんでしまうが、こちらは100ドル札の顔、ベンジャミン・フランクリンの自伝。アレサの自伝だとタイトルが「ナチュラル・ウーマン」とかでありそうではある。 Aretha Franklin / Let It Be ベ…

昔話と日本人の心

西洋の昔話が女性を結婚して幸せに暮らしました、というハッピーエンドが多いのは、意識的に困難を乗り越え勝利と共に伴侶(もしくは他の物)を得て確立する父権的自我である、というノイマン*1の説を踏まえ、文化的な違いを考えてこれに対する「女性的な目…

骨が語る兵士の最期

一昨年末からウォッジェ環礁へ遺骨収容の手伝いに参加して、楢崎先生とお会いした。実は以前クワジェリン環礁で見つかった遺骨を焼骨した時にも来ていたらしい。ということには後から名刺を整理していて気がついた。その先生の著書。先生は今年の2月にテニア…

2019年、読んだけど感想をまとめてない本の一覧

この一年で 読んだけども様々な事情(主に怠惰)から感想を書くに至らなかった本の一覧をまとめて掲載してそのうらみを昇華させる。 改訂新版 文庫 時計の針はなぜ右回りなのか (草思社文庫) 作者:織田一朗 出版社/メーカー: 草思社 発売日: 2012/08/03 メデ…

偽史と奇書の日本史

偽の歴史と書いて偽史、そういうものが歴史上いくつも残っている。適当なことが書かれているだけでは誰も信じないが、それなりに裏付けらしきものとセットで出されたり、人が信じたいような内容であったりすると時に信じる人が出てきてしまう。よほどの荒唐…

アメリカ海軍に学ぶ「最強のチーム」のつくり方

海軍一のダメ軍艦(誘導ミサイル駆逐艦)「ベンフォルド」に配属された艦長が、成果の上がらない組織を立て直し、柔軟で自主性にあふれる「強いチーム」をつくり上げた、その驚きの手法とは? 残念ながら目からウロコの金言は言ってない。アメリカ海軍のやり方…

HIGH OUTPUT MANAGEMENT

アウトプットを最大化するための仕事の基本原理とは、マネジャーが最も注力すべき仕事はなにか、タイムマネジメントの方法、意思決定のときにしてはいけないこととは、ミーティングはどう進めるべきか、1対1の面談(ワン・オン・ワン)ではなにを話すのか、人…

日本開国: アメリカがペリー艦隊を派遣した本当の理由

1854年、ペリー提督は大艦隊を率いて浦賀に再来航し、その威容をもって日米和親条約を結ぶ。しかし、その後の修好通商条約の締結は“ノンキャリ”領事ハリスただ一人に委ねられた。開国の目的は日本との交易ではなく、中国市場との距離を縮めるべく立案された…

知ってるつもり――無知の科学

冒頭でビキニ環礁の話が出ていて驚く。島民を避難させなかったビキニ以外の環礁への影響について、放射能の専門家たちが見落としていたことを例に挙げて、人間の知性が聡明であると同時に愚かであるとしている。言いたいことはわかるがアメリカ政府がその影…

秘密

1961年、少女ローレルは恐ろしい事件を目撃する。突然現われた見知らぬ男を母が刺殺したのだ。死亡した男は近隣に出没していた不審者だったため、母の正当防衛が認められた。男が母に「やあ、ドロシー、久しぶりだね」と言ったことをローレルは誰にも話さな…

蒲生邸事件

一九九四年、予備校受験のために上京した受験生の尾崎孝史だったが、二月二十六日未明、宿泊している古いホテルで火災に見舞われた。間一髪、同宿の男に救われたものの、避難した先はなんと昭和十一年の東京。男は時間軸を自由に移動できる能力を持った時間…

カササギ殺人事件

1955年7月、パイ屋敷の家政婦の葬儀がしめやかにおこなわれた。鍵のかかった屋敷の階段の下で倒れていた彼女は、掃除機のコードに足を引っかけたのか、あるいは……。その死は小さな村の人々へ徐々に波紋を広げていく。消えた毒薬、謎の訪問者、そして第二の死…

クラバート

小学校の頃に少年が大力を得て活躍する『大力ワーニャ』という本を読んだ。確か兄弟の一番下のワーニャという子が役立たずだったのが、寝るときに屋根を持ち上げようとするのを毎晩続けていたらある日屋根がドカッと持ち上がり、大力を手に入れて活躍すると…

舞踏会へ向かう三人の農夫

それは1914年のうららかな春、プロイセンで撮られた一枚の写真から時空を超えてはじまった―物語の愉しみ、思索の緻密さの絡み合い。20世紀全体を、アメリカ、戦争と死、陰謀と謎を描ききった、現代アメリカ文学における最重要作家、パワーズの驚異のデビュー…

歴史の余白 日本近現代こぼれ話

歴史と聞いて思いつくのは、授業で習う国の歴史というか歴史の表通り。しかし全てのものには歴史があって、表通りに対して裏通りというか、重要ではないかもしれないがそういうものもあるということは頭の隅に入れておきたい。ちなみに余白を埋めていくよう…

知の武装~救国のインテリジェンス 

世界の「解読法」、教えます。ニュースを鵜呑みにしていては、その「深層」はつかめない。激動の世界を生き抜くには、知性〈インテリジェンス〉が必要だ――東京五輪と舞台ウラ、金正恩の本音、プーチンの「倍返し」、安倍首相の「誤解」、CIAの内側など、最新…

インテリジェンス人間論

権力者はだから面白い。外務省在籍時代に間近で接した、歴代総理やロシア首脳の意外な素顔、さらには誰もが知る歴史上の人物の精神にひそむ生々しい野心と欲望に、インテリジェンスの視点から切り込んだ異色の人物論集。国際政治の最前線で、外交の武器とな…

古城秘話

城の歴史は凄絶な人間絵巻である。――北は松前城から南は鹿児島城まで全国三十の古城にまつわる伝説を鮮やかな語りでよみがえらせる。(amazonより) 南條範夫の城にまつわる短編集。著者特有の情念に満ちた語り口の伝承、伝説は雰囲気があって素敵。 古城秘…

メルヘンの深層

シンデレラや赤ずきんちゃんの物語から魔女裁判、人間狼、子捨てなど、ヨーロッパ社会の忘れられた実像が見えてくる。(amazonより) メルヘンな童話を様々な視点から見直す。 メルヘンの深層―歴史が解く童話の謎 (講談社現代新書) 作者: 森義信 出版社/メー…

日本の古代道路を探す―律令国家のアウトバーン

日本の古代道路について、どのように計画され機能していたか、またどうやって探すかまで丁寧に書かれている。フィールドワークの方法まで書かれている本は初めて読んだ。タイトルに偽りなし。面白かったのは上総/下総の国名の逆転について。というのは、国の…

決定版 邪馬台国の全解決

中国史書特有の記述法を元に資料を解読し、邪馬台国の場所を解く本。邪馬台国への距離という軍事機密ともいえる情報を正直に書くわけがないとか、当時の常識を踏まえて納得のいく箇所もあるが、こちらの勉強不足もあって著者の主張がどこまで正しいかを判断…

STAR WARS 99人のストームトルーパー

子供たちに買った絵本。絵本そのものは面白いんだけども和訳が余計な言葉を追加しているのが気になる。うちの娘は英語で読んでいたようなので気にならなかったらしいけど。 STAR WARS 99人のストームトルーパー 作者: グレッグ・ストーンズ,渡部岳大(Well Pl…

映画の間取り

映画の間取りを収録した本。アプリ発らしい。 いまいち面白くなかったのは意外性の無さと収録件数の少なさ、というより収録作品の半分くらいしか見てないからかもしれない。あ、「間取り」という言葉に勝手に「(家の)間取り」だと思い込んでしまったのも良…

領主館の花嫁たち

1840年、当主の妻を失ったその領主館は、悲しみに沈んでいた。そして、愛らしい双子の姉妹の家庭教師として館を訪れたテティもまた、癒しがたい傷を負う身であった。屈託なく懐いてくる、瓜二つの双子の姉妹に、徐々に生きる希望を取り戻していくテティ。だ…

シャルビューク夫人の肖像

「姿を見ずに、肖像画を描いてほしい」肖像画家のピアンボに突然声をかけてきたのは、両目が白濁した盲目の男。シャルビューク夫人の使いと称し、法外な報酬を口にして肖像画の製作を依頼してきた。屏風の向こうで夫人が語る、過去の話とその声だけで姿を推…