オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライブ

監督・脚本:ジム・ジャームッシュ(2013 米)
出演:トム・ヒドルストンティルダ・スウィントンミア・ワシコウスカジョン・ハート

 吸血鬼のアダム(トム・ヒドルストン)はギターをはじめ弦楽器なら何でも自在に弾きこなすミュージシャンとしてアンダーグラウンド・ミュージック・シーンで活躍している。
 しかしここ近年の自己破滅的な人間たちの振る舞いにアダムは抑鬱を抱えていた。そんなとき恋人イヴ(ティルダ・スウィントン)がデトロイトに住む彼の元を訪れる。
 もちろん、彼女も吸血鬼で2人は何世紀も愛し合い、生き続けてきた。久々の再会もつかの間、イヴの破天荒な妹エヴァ(ミア・ワシコウスカ)が突然2人に会いにやってきて3人の運命は、ゆっくりと変わり始める・・・。


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 何か起こりそうで何も起こさない。雰囲気番長。こいつに翼をつければ月まで飛んでくぜ、のセリフで有名なジム・ジャームッシュ監督が送るヴァンパイア・ストーリー。
 吸血鬼だからといって特別なことはあまり起こらない。むしろ日常。メカ好きだったりiPhone使いこなしていたり我儘だったりお姉さんだったりする吸血鬼はひどく人間臭く見える。特にミュージシャンとして生活するアダム、彼のギターの好みの渋さ、アーティストっぽさは世の(人間の)クリエイターを代表しているようなところがあるので、監督の気持ちを代弁させているのかもしれない。きっとそうだ。 スプロ欲しい。

 

フォロウィング

監督・脚本・製作・撮影・編集:クリストファー・ノーラン(1999 英)
出演:ジェレミー・セオボルド他

作家志望のビルは、創作のヒントを得るため、通りすがりの人々の跡をつける行為を繰り返していた。ある日、いつものように男の跡をつけていたところ、尾行していることがその男、コッブにばれてしまう。だが、コッブもまた、他人の私生活を覗き見てスリルを得るために、留守宅への侵入を繰り返していたのだ。家宅侵入のコツを教わり、創造意欲を刺激されたビルは、コッブの自信に満ちた行動に感化されてゆく。そして、数日後、ビルはコッブと2人で侵入したアパートで見た写真の女に興味を抱き、彼女の跡をつけ始める。しかし、その日を境に彼は思わぬ事件に巻き込まれていく…。

 人を尾行するのが趣味の人にとっては恐ろしい話。

大学の時分に車の免許を取り、友人らと車でふらふらと都内をうろついていたことがあった。うろつくのは主に夜なので道路は空いていて、都内の道路のつながりがわかるのが楽しかった。たまには東京を出て他県へ行くこともあった。関東はもちろん日本海を見る」というテーマで新潟富山あたりまで行ったこともあった。
それにも飽きた頃、「前の車をひたすら追いかける」ということもした。悪気はない。ある時、確か尾張小牧ナンバーだったと思うが、後をつけてるのを気付かれたのか路地に入られて停車されてしまい、中から人が出てきたので急いで逃走するということもあった。今となっては良い思い出だが、あの時逃げられずに中の人につかまって大変なことに巻き込まれたら、というようなことが頭に浮かぶ映画である。創作に携わる人なら、こういう出来事から生み出していくのかなあ。知らないけど。
創作における経験の重要性というのは多くの人が指摘するところだけども、藤子・F・不二雄は「思い出の冷蔵庫」を開けるなと言っていたので、人それぞれですかね・・・ときれいにまとめたつもりが、「思い出の冷蔵庫」発言は捏造疑惑があるらしい。台無しだなおい。 
フォロウィング [DVD]

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日本に一時帰国してました

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神社の木漏れ日。

わかりづらいが、南の島では木漏れ日というのはほとんどないのでこの写真は日本。
というわけで日本へ一時帰国した。10日の休みで日本滞在は6日間という今までで一番忙しい日程で、仕事・健康診断・買い物・法事・友達と会う・家族サービスで終了。有給休暇は60日くらいあるものの、状況が休暇を許してくれない。

今回最重要だったのはメガネの購入。今使っているものが最後の一つなので、いの一番にメガネ屋に行ったが、レンズ交換を含め4本購入したら出来上がりは8月になるとのことで、持ち帰ることはできなかった。

帰国中に目立ったのは、タピオカミルクティー。ネットで「流行っている」というのは知っていたが、まさかあれほどとは思わなんだ。なんなんだあれは。なぜ並ぶのか。なぜほとんどの店で取り扱っているのか。タピオカ扱わないと税金二倍!とかあるんじゃないの?というレベル。今までも無かったわけではないだろうに。

歓楽通り

監督:パトリス・ルコント(2002 仏)
出演:パトリック・ティムシット、レティシア・カスタ他

娼館の中だけで育ってきたプチ=ルイ(パトリック・ティムシット)。ある日、彼の前に新人娼婦マリオン(レティシア・カスタス)が現れる。プチ=ルイは生涯をかけて彼女を幸せにする決心をするが、彼女は危険な恋の罠に落ちてしまう……。

 主人公プチ・ルイが幸せにしようとするマリアンがとにかくきれいなので見ていて飽きない。他の作品でもそうだがパトリス・ルコントは女性をきれいに見せる監督である。この作品では暗い場面で特にきれいだった。明るい所ではそうでもない。
ただそのきれいさは無駄ではなく、プチ・ルイの妄執に説得力を与えていて、寝取られ上等とまで言い切る無償の愛の対象として十分耐えうるものとなっている。ちなみにパトリス・ルコントはインタビュー(『歓楽通り』パトリス・ルコント監督合同取材「映画の中での儚さや悲しさは、よりロマンチックになるものなんです」)で、

一方方向の愛は、日常生活であったなら耐えられないことだと思います。『歓楽通り』は映画の世界であるということを、認識する必要があるでしょう。自分の実体験の中で、作中のような愛があるとしたならば、これはもう耐えられないことです。映画の世界と実生活は混同すべきではないし、別物だと思っています。

と語っているので、寝取られが好きなわけではなく、映画をロマンチックにしたいと考えてる結果そういう感じが多くなる様子。きれいな女性を見たい向きにおすすめ。

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知ってるつもり――無知の科学

冒頭でビキニ環礁の話が出ていて驚く。島民を避難させなかったビキニ以外の環礁への影響について、放射能の専門家たちが見落としていたことを例に挙げて、人間の知性が聡明であると同時に愚かであるとしている。言いたいことはわかるがアメリカ政府がその影響を知りつつわざとやった可能性もあるのでこの例はあまり適当とは言えない。
閑話休題。著者が言いたいのはその対比である。知っているつもりで知らないことはたくさんある。なぜそのような錯覚を起こすのか?その過程と実際どのように考えるのか?実は考えていないのか?人々がいかにモノを知らずに適当に生きているか人間のように考えるコンピューターをつくる段になって、改めて知っているということ、考えるということを様々な角度から見つめなおしてるんですとかそういう話が主な内容である。知らないことを知ることは難しいが、知らないことを知ると知らないではだいぶ違ってくる。無知の知である。
価値観の話のところで、人の価値観は所属するコミュニティによるところが大きいという話があった。人はコミュニティから知恵を得るという話は何度も出てきたのでさもありなんというところ。海外で暮らしているとこの辺りのことがよくわかる。今日日、海外と日本が大きく違うことは大体の人が知っていることと思うが、モノの違いはすぐに理解できるが考え方の根っこが違う点については理解が難しい。
それから考え方の違いで思い出したが、この本の内容は謙虚さを美徳とする日本人と自己主張こそが正義のアメリカ人では該当する度合いが変わってくるのではないだろうか。なにかと人々は思い込みが強いという話が多く出てきて、それはまあそういうこともあるけど、それはお気楽アメリカ人だけだろうという気がしないでもない。もっともそれは私がそう思いたいだけで最近の日本人は違うかもしれないという気も少しはする。

 

知ってるつもり――無知の科学

知ってるつもり――無知の科学